ヤリと見上げた
その夜。いつものようにベッドの中で1人甘い息を洩らしていた京子だったが、しかし、どうもいつものように調子が出ない。京子は枕の上でパッと目を開くと、大きな溜息を洩らし、それまで乳首を弄っていた指を止めては薄暗い天井をボンヤリと見上げた。
新婚2年目にして旦那が単身赴任となった京子には、自慰は唯一のストレス発散だった。
それは、毎月末に帰って来る夫も公認の事で、若い新妻に浮気される事を怖れているのか、単身赴任の夫はいつも毎月末の帰宅時には新しいアダルトグッズを京子のおみやげに持ち帰って来ていた。
京子は枕元に置いてあったディルドを摘まみ上げ、それをジッと見つめた。
そのディルドはやっぱり夫がお土産として買って来たモノで、色も形も、そして感触さえも本物そっくりなペニスのオモチャだった。
夫が買って来るペニスのオモチャには全て共通点があった。それは、そのオモチャが全て小さいという事だ。夫は自分のペニスのサイズによく似た小さなサイズのディルドやバイブしか買って来ないのである。
そんな小さなディルドを怪しく擦りながら、京子は天井をボンヤリと見つめたまま「どうしてかしら・・・」と溜息混じりにふと思った。
そう、いつもなら自慰の時に浮かんで来る夫の顔がその晩はなかなか浮かんで来ないのだ。
夫に正常位で抱きしめられながらキスをされるシーンを思い出そうとしても、妄想の中の夫の顔は曖昧にぼやけていて、それはまるで別人のようなのだ。
目覚まし時計の針の音がカチカチと響くだけの静まり返った寝室で、1人モヤモヤとしていた京子はベッドを飛び出すと鏡台の上に置いてあった結婚式の写真を手にし、それをベッドに持ち込んだ。
カーテンから洩れる月明かりに白いタキシードを着た夫が照らし出される。